そのLANケーブル、10年前のものでは?「カテゴリー5e」が1G回線の足を引っ張る、目に見えない損失
インターネット回線やルーターを最新のものに入れ替えたのに、「思ったほど速くならない」「なんとなく重いまま」という相談をよく受けます。
現場で見ていると、その原因のかなりの割合が「データを運ぶ道=LANケーブル」が古い・質が悪い・敷き方が雑という、シンプルな理由です。
「繋がっているから大丈夫」「エラーは出ていないから問題ない」という思い込みが、1Gbps回線のポテンシャルを半分以下、場合によっては10分の1にまで落としているケースは珍しくありません。
1. ケーブルに刻印された「CAT」の文字を確認せよ

まず最初にやるべきは、ケーブルの被覆に印字されている「CAT」の文字を見ることです。
LANケーブルには「カテゴリー(Cat)」と呼ばれる規格があり、それぞれが保証する帯域・速度が決まっています。
代表的なカテゴリの違いは以下の通りです(代表値)。
| 表示 | 最大速度の目安 | 伝送帯域 | 主な用途のイメージ |
|---|---|---|---|
| Cat5 | 100Mbpsまで | 100MHz | かなり古い。今は基本NGレベル |
| Cat5e | 1Gbps(100mで保証) | 100MHz | 一般的な1Gbps環境には多く使われている |
| Cat6 | 1Gbps(ノイズ耐性が強化) | 250MHz | オフィス配線の標準レベル |
| Cat6A | 10Gbps(100mで保証) | 500MHz | 将来10GbEも見据えるインフラ向け |
重要なのは「どこまで保証されているか」です。
- Cat5e:100mの配線で1Gbpsを安定して通せるよう規格化されている
- Cat6A:100mで10Gbpsを通せるよう設計されている
つまり、同じ1Gbps回線であっても、Cat5eとCat6Aでは「余裕度」が全く違うということです。
- Cat5e:ぎりぎり1Gbpsを支えられる“そこそこの道路”
- Cat6A:10Gbpsも見据えた“高速道路クラスの道路”
今は1Gbps回線でも、数年後に2.5GbE・10GbEを使いたくなったとき、Cat6A配線なら「ケーブルはそのまま」で機器だけ入れ替えれば対応できるというのが大きなポイントです。
2. 経年劣化による「接触不良」と「通信ロス」

LANケーブルにも、性能という意味での“寿命”があります。
よくある劣化のパターン
- コネクタのツメが折れて、差し込み口でグラグラしている
- イスやキャビネットに踏まれ続けて、被覆が潰れている・ひび割れている
- 何年も抜き差しを繰り返し、端子部分の銅が酸化・摩耗している
- 直射日光・高温多湿・ほこり・カビで、被覆や内部の絶縁が劣化している
一見「まだ使える」ように見えても、内部では
- 信号の減衰が増える
- ノイズ(クロストーク)が増える
- 再送(通信のやり直し)が増えて、実効速度が落ちる
といった現象が起き、「なんとなく遅い」「たまに切れる」といった曖昧な症状として表面化します。
一般的なLANケーブルの寿命の目安は約20年とも言われますが、
- 厳しい環境(熱・湿気・日光・踏みつけ・頻繁な抜き差し)では、もっと早く性能が落ちる
- 明らかな物理劣化(ツメ折れ・被覆割れ・変色など)があれば、年数に関係なく交換推奨
と考えた方が安全です。
3. 「自作ケーブル」の落とし穴

オフィスによっては、昔「有線が足りなくなったから」と言って、
市販のケーブルとRJ45コネクタで“自作LANケーブル”を作っているケースがあります。
もちろん、プロがきちんと結線した自作ケーブルであれば問題ありません。しかし、現場でよく見るのは、
- ペアごとのより戻しが長すぎて、ノイズ耐性が落ちている
- 結線順が規格どおり(T568A/B)になっていない
- 被覆を剥きすぎて内部ツイストが崩れ、クロストークが増えている
といった「見た目はつながるが、性能面ではかなり怪しいケーブル」です。
さらに厄介なのは、
- フロア全体はCat6Aで新設したのに、
- どこか1本だけ、昔作った自作のCat5eケーブルが間に挟まっている
といったパターンです。
この1本が、そこから先のセグメント全体の安定性を落とすボトルネックになることがあります。
- 特定の席だけ頻繁に切れる
- 同じハブにつながっている人たちだけ速度が遅い
といった症状がある場合は、その区間のケーブルを新品の規格品に交換してしまった方が、調査コストより安くつくケースが多いです。
4. 長すぎる配線とノイズ干渉

LANケーブルは、規格上「最大100mまで」使用できますが、
現場で問題になるのは“長さそのもの”より、「どう敷いているか」です。
よくあるNG配線
- OAタップの電源ケーブルと、LANケーブルを束ねて結束バンドでギュッと締めている
- 電源ラインや蛍光灯の安定器、モーター類のすぐそばを長距離並走させている
- ケーブルラックが足りず、LANと電源を同じルートに混在させている
電源ケーブルや家電からは、電磁ノイズが発生します。
LANケーブル内部の銅線はこのノイズに弱く、近距離で平行に這わせるほど、信号にノイズが乗りやすくなります。
その結果、
- 特定の時間帯(コピー機・エアコン・大型機器が動いているとき)だけエラーが増える
- 長距離区間で再送が増え、実効スループットが落ちる
といった現象が起きます。
対策の基本
- 電源ケーブルとLANケーブルは、できるだけ距離を離す
- どうしても交差する場合は、「平行ではなく直角に交差」させ、並走部分を短くする
- 可能なら、LAN用と電源用でルート(ラック・ダクト)を分ける
- ノイズの厳しい環境では、シールド付きケーブル(STP)+適切なアースも検討
「長さ」より、「どこをどう通しているか」が、通信品質に大きく影響します。
5. インフラ投資としての「配線引き直し」

ここまでの話をまとめると、
古い・劣化した・設計の悪いLANケーブルは、最新の回線やルーターの足を引っ張る“目に見えないボトルネック”だと言えます。
経営者目線で見ると、「配線引き直し」は一度やってしまえば長く効くインフラ投資です。
Cat6A以上で組んでおくメリット
- 今は1Gbps回線でも、今後2.5GbE/5GbE/10GbEを導入したくなったとき、配線をそのまま流用できる
- 将来のアップグレード時に、「ケーブルも全部やり直し」という二重投資を避けられる
- ノイズ耐性や余裕度が高く、「なんとなく遅い」「ときどき切れる」といった曖昧なトラブルを減らせる
「今」やり直す意味
- オフィスのレイアウト変更・移転・リニューアルのタイミングは、隠蔽配線をやり直す最後のチャンス
- 床・壁・天井が仕上がってからでは、工事コストも業務への影響も大きくなる
- 逆に、このタイミングでCat6A以上で整えておけば、今後10年単位で大きな手直しが不要になる可能性が高いです。
まとめ:目に見えないインフラこそ、プロの丁寧な仕事が光る場所

LANケーブルは、普段は天井の裏や床の下に隠れていて、意識されることがほとんどありません。
しかし、会社のすべてのデータが通る「血管」であり道路」です。
- カテゴリが古い
- 経年劣化している
- 自作品や不適切な敷き方が混ざっている
こうした状態を放置したまま、回線やルーターだけを新しくしても、本来の性能は絶対に出ません。
福岡エリアの中小企業向けに、T‑dotでは「配線リフレッシュ診断」として、
- 現在使っているLANケーブルのカテゴリ・世代・劣化状況
- 自作ケーブルや古いハブが混ざっていないか
- 配線ルートが電源ノイズの影響を受けていないか
を現場でチェックし、「どこからどう変えれば、今の回線の性能をきちんと引き出せるか」を整理するお手伝いをしています。
「回線やルーターは頑張って新しくしたのに、なぜか速くならない」と感じているようなら、
一度“目に見えないインフラ”であるLANケーブルを見直すタイミングかもしれません。
